こんにちは、keityです。
今回は「役員報酬の決め方」についてです。
役員報酬に関する昨今の流れとして、上場企業にはその透明性と説明責任が求めれています。その企業へ求められる内容は、コーポレートガバナンスコードや2019 年 1 月 31 日「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」によって示されています。
そのような中、私の業務でも役員報酬に関する取り組みが多くなりました。役員報酬については十分な情報が開示されている状況ではないため、各企業で探り探り進めているのが現状かと思います。私自身も官庁が発信する情報やコンサル会社が発行する書籍、民間サーベイ等の情報を中心に進めています。
報酬は、役員・従業員問わず、各企業による「決め」の部分が多く、唯一解がありません。役員報酬もそうであるため、どのような考え方で支給していくのか、ロジックを作る必要があります。
また、取締役の報酬となると、色々な制度や規定を定めることができる取締役会メンバーの報酬になりますので、その透明性は課題となってきました。
これから益々透明性、説明責任の重要性は高まりますので、人事部門としてはしっかりと対応していかなければいけない分野です。
私が業務に取り組む中で役に立った情報を以下にまとめますので、ご参考にしてください。役員報酬の設定や基準等に悩まれている役員・人事部門の方の課題を解決できれば幸いです。
まずは、企業に求められていることからまとめていきます。
上場企業が求められていること
以下の情報は、日本で上場している会社に求められている企業統治(ガバナンス)についてまとめられている原則です、
現在は上場企業に求められている内容ですが、上場企業以外の企業が全く関係ないかというとそうではないと思います。ガバナンス上、参考になることもあると思います。
①コーポレートガバナンス・コード
上場企業に求められるコーポレートガバナンスに関する全体の情報がまとめてあるページです。日本企業はこのようなガバナンスを行うべしという原則が書かれているものです。
実際に企業が行うべき行動が書かれています。
企業には、「コンプライ オア エクスプレイン」が求められています。
遵守(コンプライ)せよ、さもなくば、説明(エクスプレイン)せよ」というもので、当事者に対し、コーポレートガバナンス・コードを遵守するか、遵守しないのであれば、その理由を説明することを求めるものです。
ということで、しっかりと対応していかなければなりません。中々つらいものがあります。
②企業内容等の開示に関する内閣府令(改正開示布令)
「企業内容等の開示に関する内閣府令」の改正案に対するパブリックコメントの結果等について(金融庁)
有価証券報告書等の開示に求められるルールです。リンク先には役員報酬以外のことも書かれていますが、建設的な対話の促進に向けた情報の提供役員の報酬について、報酬プログラムの説明(業績連動報酬に関する情報や役職ごとの方針等)、プログラムに基づく報酬実績等の記載を求めることされている部分を押さえておかなければなりません。
③対応
ということで、まずは上記の①・②の情報をおおまか理解して、自分の業務に落とし込んでいくことが必要になります。
まとめると、①自社では何をする必要があるか、②何の情報をどのように開示するのか、この2点を頭に入れながら制度設計を行うことが重要となります。
役員報酬の決め方の方向性
①一般的な決め方(既に過去の決め方になってきている)
役員報酬は、会社法で「定款または株主総会の決議によって定める」旨が記載されています。
現在のところ、一般的には、まだまだ以下の手続きを行って決めている会社が多いのではと思います。
➀「株主総会」で役員報酬の総額(枠)を決めます。役員ごとの報酬金額は「取締役会または代表取締役」に一任します。
➁「取締役会」で➀で決めた総額の枠内で、役員ごとの報酬金額を決定します。
しかしながら、この一般的な方法は、①の「取締役会や代表取締役に一任」の「一任」に疑問が持たれています。例えば、代表取締役に一任となると、もはや透明性の担保は非常に難しくなります。その人が全て決めることができるということですから。
先に紹介した改正開示布令はそのような現状を打破すべく出されている内容です。基準を設けて、しっかり説明せよということも求められていますから、現在の一般的な方法は、全くそれに従っていないことになります。ここ最近で一般的な方法は大きく変わってきています。
どのような内容に変わっているかというと、任意の諮問委員会を設置する会社が増えています。
②任意の諮問委員会
委員会設置会社の委員会ではなく、監査役設置会社での設置が可能で、あくまでも「任意」の委員会です。これは浸透が進んでいます。
委員会の委員は、社外取締役、監査役等独立役員により構成されるのが一般的です。例えば役員報酬の議案であれば、代表取締役が考えた報酬案を委員会で議論し、その案に対し、意見をするという内容です。任意の委員会ではあるため、その会運営の設計は裁量をもって設計することもできます。
また、この委員会は報酬だけでなく、「指名」についても関わることが多いです。「指名」は取締役の候補、役職等について検討するということです。
今後ますます浸透することが進むスキームです。
役員報酬について学ぶリソース
それでは、学ぶためのリソースを紹介しておきます。コーポレートガバナンス、改正開示布令はどこかのタイミングでは必ず読む必要があります。はじめにそれから目を通すというのはかなり苦行になりますが、順番的には正しいです。
デロイトトーマツコンサルティング社のコンサルタントの方が執筆。
「2018年のコーポレートガバナンス・コード改訂に対応した、役員報酬・指名制度改革に関するノウハウを体系的に解説した初めての書籍。」
また、トーマツ社で行っているサーベイのデータも活用されているのが非常に良い。報酬、指名(サクセッション)まで含む内容ですので、役員関連の制度に関する基本的なフレームワークを自身の中に作ることができます。
はじめの1冊におすすめ。
役員報酬の実務全般を学ぶことができます。全体観を押さえて、自社に必要な部分や馴染みそうな制度を検討することができます。報酬制度を検討する際にはこの1冊がとても役に立ちます。
指名・報酬委員会の全般を学ぶことができます。委員会運営規則の規定文も掲載されており、とても便利です。委員会を作る構想がある企業の方にはおすすめ。
④労政時報 役員関連調査
役員報酬の基準を検討するのに、労政時報が行っているサーベイが非常に役に立ちます。毎年1回、12月年末号に役員報酬の記事が公開されます。役員サーベイでは、定期的に行われている一つので、継続的にチェックしておきたい情報です。
労政時報は通常の書籍を購入するより、値段は高いのですが、参考になる情報が多いです。年間10万はいかないと思いますので、人事部門メンバーで読みまわせば、コスパ高いです。
デロイトトーマツコンサルティング社が実施する役員サーベイの報告資料です。
2012年からのサーベイ結果概要を閲覧することができます。
現在は2018年版が最新版でしょうか。
こちらのサーベイに参加すると概要と比較すると、非常に細かい報告書を無料で入手できます。回答するに時間はかかりますが、非常に有効なデータを得ることができます。
役員報酬の分野では、日本最大規模ということです。
報酬額だけでなく、先の諮問委員会の設置やサクセッションプラン等ほかの検討事項についても取り組み状況がわかるので、とても良いです。
まとめ
対象者が会社の偉い方になるので、とてもセンシティブな業務であるということと、意思決定も複雑です。
他社のお取り組みやデータを参考に、ロジックをしっかりと確立して進めたい分野です。
本日は「役員報酬の決め方」という話題でした。
本日は以上です。
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